感想しか書いてない

本・映画・その他見たもの読んだもののアウトプット用のブログです。ほぼ感想だけを載せる予定

【感想】スズキナオ著 深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと

今時珍しいサイト巡回をしていたら「深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと」という本を見つけた。紹介文を読んだかぎりでは何のことない事を如何にして楽しむかといった感じの本だった。

なんとなく気になって読むことにしたが、内容としては「大衆的な個人経営の飲食店レビュー」「滅茶苦茶地味なレジャー地レビュー」「お金があまりかからない大人の遊び」といったものが書かれている。

著者自体が「金はないが暇だけはあるなかでどう楽しみを見つけるか」といった趣旨で書いた本なので、まるで道に落ちている小石から何か面白そうな形をしているものを探すような本だった。昨今の社会情勢的にいかにして競争に勝つかみたいな話ばかりのなかで、このような本はとてもリラックスして読める本だと思う。活字好きが肩ひじ張らずに暇つぶしで読むのに一番合う本だろうし、おそらく著者もそう読まれたらとても喜ぶだろう。

地味なレジャー地の話はなんだかちょっとつげ義春の旅を扱った漫画っぽさがあるので、つげが好きな人にもいいかもしれない。

この本が書かれた時期が2019年でかつ個人経営の飲食店を多く扱っているので、2020年からのコロナ禍で何軒生き残れたのか気になってしまう。なので、大戦前の日常の記録を見ているような気持ちにもなる。登場する店も安さが売りの店が多く、生き残っていても相当苦しい思いをしている事は変わらないだろうし、本に書かれている値段ではもう商売もしていないだろう。帯の紹介文で岸政彦という社会学者が「これが生活史だ」と評しているので、大戦前の記録だと考えるのはあながち間違ってないかもしれない。

スズキナオ氏は華やかではない日常や景色や店を「暇×好奇心×コミュ力×想像力+酒」をもってして楽しんでいる。個人経営の店主と色々と打ち解けているのは中々すごいと感じた。しかし、金がなくても好奇心と想像力があれば人生楽しくなるというのはあるかもしれないし、金があっても好奇心と想像力がなくなってしまったらとても悲しい話だと思う。

個人的に面白そうと思ったのが「マイ史跡巡り」で「自分が好きな偉人の史跡を巡るのが楽しいのだから、それを親友や恋人の思い出の土地で史跡巡りしたら面白いのでは?」というのはちょっと目から鱗だった。デートの一つとしてはかなり良いかもしれんがかなり仲良くならんと駄目な遊びでもあるのが欠点である。