感想しか書いてない

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当時の中国は今でいうインドのような存在だったのか【上海游記(感想)】芥川龍之介

 どういうわけか、ふと一昨年に芥川龍之介が上海に行った時の事をドラマ化したやつがあったなと思い出して、青空文庫にないかと探してみたらあったので読んでみた。

  NHKのドラマの方はTVで放送せねばならぬのもあって、猥雑なもののあくまで絵になる光景が多かったが、原作の方は綺麗な庭園でも立小便が多くてあちこち小便まみれだったなどとちょっとえぐい表現が目に付いた。

 個人的に気になったのはとにかく庭園でも舞台の楽屋裏でも「汚い」みたいな事を作者が書いてるのが気になった。Youtubeなどで20世紀前半のアジアの映像を見れるが、心なしか日本は綺麗な感じで中国のそれは小汚いように感じていたがそれは贔屓目ではなかったという事なのだろうか。

 芥川は「詩歌に出てくるような光景は中国に無かった。ただ小説に出てくるようなものは結構あった」みたいな事を言っていたので、まぁそういう事なのだろう。

 あと、彼が章炳麟に会って話した時の内容で(章炳麟は手塚治虫の一輝まんだらでも出てきたのでなんだか感慨深かった)、「中国人は極端を嫌って中庸を愛する国民だから赤化してもすぐそれをなげうつ」といった事を言っていたが、彼が今の中国を見たらなんと言うだろう。そもそも共産主義思想が学生にしかウケないと思っていたのが彼の間違いだったのだろうか。

 しかし、他の中国の土地ではできなかった屍姦でさえも上海ではすぐに出来るといった事まで書いてあるので、当時に上海の魔窟ぶりがよく窺える。なんというか、長い歴史と不潔さと何かよくわからんものが大量に蠢いているという感じが少し前の日本人のインドに対する視線とちょっと似てないかなとこの作品を読んで思った。

 ただ、当時の中国は上海以外でも魔窟っぷりがすさまじかったのではないだろうか。

満州の阿片窟を調査した「大観園の解剖」という本があるのだが、そこに書かれている内容も凄まじいので自己責任が伴うが一見の価値のある本だった。国立国会図書館デジタルコレクションにもあるが、都市の図書館ならおそらく借りられる本だと思うので興味のある方は手に取って読んでみてはどうだろうか。

 個人的に芥川はずっと日本に引きこもっていたイメージだったのだが、このように大陸に渡って当時の識者と色々話をしていたのは意外だった。