感想等メモ

Xの検索機能がゴミと化したのでこちらで記録する事とした。

五木寛之・立松和平共著 親鸞と道元 感想

 他力本願の教祖の小説を書いた人と自力本願の教祖の小説を書いた人による対談なので、面白く思い手に取った。親鸞と道元の共通点はあるところにはあったり(言葉では全ては理解できないとか)、違うところは違うと述べられているところは面白かった。なんにしても最終的には仏という上位存在におまかせするという点は共通していた。

 色々、面白い事は語られているが、終盤の五木氏の宗教観が印象的だった。「本を読んで目覚めて入った信仰はあまり続かないのでは」「宗教の支えがあれば自殺を思いとどまるというのは無いと思う」「身近に接した人の生き方や存在に慕わしく思ったり、心安らいだりして、その人が何かしら信仰を持っていた場合は信仰の基本的な入口なのではないか」などなど。

 あと、「宿業」という考えについても、「今の行いが来世かもしくは現世の後でいい結果になるのだから、むしろ前向きな思想では」と言っていたのも面白かった。現代の「親ガチャ」とはえらい違いである。

 

向谷匡史著 親鸞がヤクザの事務所に乗り込んで「悪人正機」を説いたら 感想

 題名の通り、現世に舞い戻った親鸞が武闘派ヤクザの事務所に押し入って説法する内容なのだが、ストーリーの形式で仏教や浄土真宗の知識が入ってくるので、入門書としてはかなり良い本だと思った。

 とくに個人的に印象に残ったのが、「中道」という言葉の本来の意味は「バランスが良い」「丁度良い」という意味ではなく、「結果がどうあれ平然としている心持」(説話の例としては森に果実を取りに行って、取れても取れなくても平然としているというものだった。)思えば、何をするにでも「失敗したらどうしよう」などといつも不安に思っていた自分には一番必要な心持だったのかもしれない。

 あと、とりあえず捻くれた見方をすれば、この本の親鸞が押し入ったのが、時代の流れから取り残されて斜陽気味になっている昔ながらのヤクザの一家だったから聞き耳を立ててくれたのもあるように思う。これも仏教的な視点から見れば「縁起」があったという事なのだろうが。これが昭和時代のイケイケだった時期や今のトクリュウみたいな連中だったら鼻で笑われて追い出されてそうではある。

 しかし、親鸞がトー横キッズ達に説法するとしたらどうするのかは見てみたくはある。

 それから、今まで仏教というのは「人生全てが苦しみ」と言っているから「なんて暗い宗教だ」と思っていたが、正確には「思い通りにならない」「何もかも変わっていく」事が仏教でいう「苦しみ」であり、「≪苦≫そのものが生滅するのではなく、受容と肯定に苦でなくなる」というのが釈迦の教えらしい。で、「煩悩まみれの我々凡夫にはまず無理なので阿弥陀如来の慈悲に縋りましょう。」というのが浄土真宗の教えだととりあえず自分の中での理解とした。

 

ルーデウスというか無職転生がキモい理由

 シーズン2まで結構面白く見ていたが、シーズン3で俺はもう視聴をやめる事を決めた。それは今まであったルーデウスというか無職転生世界における変態的な描写が無視出来ないくらいまで鼻につきだしてきたからだ。

 一応、自分はインモラルやアダルトな作品はそれなりに嗜んできたと思っている。そんな自分が無職転生については違和感というかキモさが無視できないくらいに気になりだしたので、「無職転生はこういう世界だから」などの反論にはどこか腑に落ちなさを感じていた。

 それは何故なのか。それは「王道異世界ファンタジーの面をしながら、エロゲの設定を持ち出している」からなのではないだろうか。「本来だったらエロゲのシナリオであるものが地上波作品になっている」「キワモノ系なのに普通のファンタジーの雰囲気をまとっている」こういった理由で自分は違和感や気持ち悪さを感じているのではないだろうか。

 考えてみて欲しい。NARUTOを見ているつもりだったのに作品の節々に対魔忍みたいな描写があったら嫌に思う人はかなり出てくるだろう。この作品は異種族レビュアーズや岡本倫のパラレルパラダイスみたいに最初から「この世界は今までいた世界とは違ったぶっとんだ倫理観や設定がある」としっかり描写するべきだったのである。もしくはルーデウスが幼少期にこの世界はハーレムを作る事が可能と聞いて「今までの人生とは違ってハーレム作ってウハウハするぞ!」と誓ってれば良かったのではないだろうか。

 あと、ルーデウスの変態的行動がギャグに昇華出来てないので、彼のキモさを作品の特徴ではなくエグ味にしかなってない。デスノートのリュークみたいにヒトガミが常に近くにいてルーデウスの変態行動に「相変わらずキモイ事やってんな」みたいにつっこませていたら割とそのキモさがマイルドになったのではないだろうか。ただ、アニメは原作よりキモさが和らいでるというから、やはり地上波アニメじゃなくてエロゲでやった方が良かったんじゃなかろうか。そう考えると惜しい作品ではある。

『なぜ彼らは傷つけられても保守を支持するのか?|ホックシールド「自国における異邦人」』

 アメリカの貧困地域のある男性労働者が何故自分の健康を害し、かつ切り捨てた業界や政党を支持し続けるのかを説明した動画だったが、本来だったら救ってくれるはずのリベラル陣営や行政が口では良い事ばかり言うが、実態は尊厳を破壊し、侮辱ばかりしてくるからというのが中々に示唆に富んでいると思った。

 聞けばボケ老人でも侮辱された事は理解するという。それほどまでに「尊厳」というのは人間の根源的な欲求なのだろう。JOJOの台詞で「侮辱するという行為に対しては殺人も許される」というのはよく言ったものである。中世の日本人もやたらめったら尊厳を傷つけられる事に敏感であるし。

youtu.be

みぃちゃんと山田さん 雑多な感想

 みぃちゃんと山田さんが終わった。ネットでちらちらと読む程度で全てを読んではいないが、そもそもみぃちゃんやその他男性障害者の扱いや作者の言動から「リアル」を盾に差別を容認するような雰囲気を感じ取っていたので、正直それほど好きな作品ではなかった。ただ、悪い意味で話題作ではあったので、ネットウォッチ感覚で終盤の方から無料になったものだけを追いかける形で読むことだけはしていた。

 そして、最終回となったのだが、これを読んで自分は作者の描きたかったものだけはぼんやりと感じ取る事はできた。作者は本当は山田さんを主人公にした私小説的なものを描きたかったのではなかろうか。ただ、話が色々と急展開かつ雑な要素がてんこもりで無理やり作品を畳んだ感はぬぐえなかった。なんというか、作者がもっと障害者や社会に対する解像度が高ければもっと良い作品になれたのではと思えるので、惜しい作品だったのかもしれない。

pocket.shonenmagazine.com

野望の王国というより強迫観念の物語に見える 【雁屋哲原作 野望の王国 感想】

 この漫画を読むと「俺たちは小賢しくなってしまった」と感じる。語っている事は固い?ものであるが、そこに至るまでの過程が熱情と勢いと暴力で何もかもつっきる様は現代の漫画ではギャグ漫画以外では不可能だろう。

 しかし、本作の主人公である征五郎は野望に燃えているというより、強迫観念に突き動かされているようにしか見えない。この本を読んでいる時に自分は征五郎の動機がよくわからなかった。野望野望と言う割に野望を叶えてどうするのかという事は征五郎からは全く語られない。相棒の片岡の方がまだ理解できる。「父を殺した社会の特権階級に復讐するため」なのだから。話の終盤あたりで自身が「ヤクザの妾腹の子として生まれた為に世間から蔑まれる運命を社会から背負わされたが、その社会は偽善的だから、人間としての尊厳を取り戻すにはそんな社会を支配するしかない。」と言っているが、個人的には「尊厳を取り戻すにはそこまでせねばならんのか」とも思わなくもない。征五郎は征二郎の事を「昔ながらの侠客的な考えを持っているから、俺とは合わない。」とも言っているが、征二郎が利益を出しまくる企業経営をしたり、飛行船と高性能カメラによる監視網を築いたりと、明らかに現代の軍事会社並の組織運営を行っているので、征五郎が時間をかけて征二郎を説得したりなどすれば共存共栄できるのではとも思ってしまう。

 そもそも、征五郎がここまで支配に執着するようになったのも、幼少期に本家の兄弟達からいじめられている所から端を発しているが、これを見ると野望の目覚めというより、強迫観念の目覚めの方が近いのではないか。

 征五郎のあの思考だと、この先はアメリカとの対決をも視野に入れていかなくてはいけないだろう。それを考えると恐らく彼はこの先あまり幸せにはなれないのではないか。

 全体として見るとチート主人公が煩悩が燃え盛るままに日本を支配する話であり、動機も怒りや恐怖から来ているという悲しいというか滑稽な話でもある。そもそも原作者自体があとがきで「無茶な野望を追いかけると不幸になる」とも書いてあるし。

 平田弘史作品などの劇画でもよく言われるが、「必死な行動は俯瞰して見ると滑稽になる。」というのはこの劇画を見ると本当に実感する。

 

 

ナガノ原作 映画ちいかわ人魚島のひみつ 感想

 内容はXで追いかけていたので、映画化すると知った時は見ようと思っていたが、よくも悪くも漫画の通りに映像化が出来たなという感じだった。

 自分がひねくれているからかもしれんが、島二郎などのご都合展開があまり説得力がなかったというか、漫画だと端折られていたアクションシーンが映像化でちゃんと描写されると、ちいかわの絵柄もあってシュールというかなんか変な違和感を感じてしまった。そもそもナガノ作品自体がシュールなものなので野暮なつっこみではあるが。

 鑑賞後、映画館を出た後、娘を連れた父親が「なんかモヤモヤする」とボヤいてたり、祖母?を連れた孫娘?が「ちいかわは実はダークなんだよ」とドヤ顔で語っていたのが印象的だった。

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