感想しか書いてない

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外国から見た公害映画というのは初めてだったかも【MINAMATAーミナマター (感想)】

 才能が枯れ果てたオワコンのカメラマンが異国の地で困難に直面しながらも己のやる事を再確認し、同じくオワコン化しつつある雑誌に写真を載せた事で世界を変えたという話である。

 良い映画ではあると思ったが、その地域でチッソで食っている人達が沢山いるというところの書き方が浅いようにも感じた。まぁ企業側を分かりやすい悪役にしないと映画として面白くないのだから割愛されたのだろう。しかし、企業側がデモ隊に普通に暴行してくるのが恐ろしいというか時代を感じた。今時そんな事をすればあっという間に炎上してしまうだろう。そのあたりを見れば我々はあの頃より多少は進歩できたという事か。あと、勝手に病院に侵入して史料を盗む?シーンがあったがあれは本当にやった事なのだろうか。そちらが非道極まりない事をしているのだから、こちらはこれくらいの事はなんら問題ないという事なのか。

 この映画を見るとユージン氏のおかげで水俣が救われたとも見れるが、あくまで現地の人々の活動の賜物で、彼がした事は今まで積み重ねてきた事の最後の一刺しみたいな感じだったのだろう。

 ただ、メディアが散々都合よく事実・現象を切り取って誇張するのを嫌というほど見てきた自分にとっては素直に英雄視する事はできなかった。

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 ソースはwikiだが、劇中でも出てきたこの「排水管から垂れ流される死」という写真は既にメチル水銀を含んでいない排水を有害なように撮っているので、現代だとネット上で即叩かれそうな話でもある。(ただ、写真を見た限りでは随分汚いので無害とも思えないが)

 なんにしても海外監督が日本の公害を描くというのは珍しい作品だった。

 

 水俣といえば個人的に印象が残っているエピソードがある。高校時代に環境問題を扱った授業を受けたのだが、その時に教師から、かつて東南アジアから留学で来た子たちに水俣に関する映像を見せたところ「発展の為には仕方がない事だ。うちの国ではこんな工場がなくても貧困で綺麗な水が飲めずに大勢の人間が死んでいるんだ」と答えた話を聞いた時は今までの常識がひっくり返るような体験だった。

 その話を聞いた時は、彼らの親族が水俣病みたいな事になってもそう言えるのかと思ったが、昨今の我が国の貧困に関するあれこれを聞くとなんとも煮え切らない気持ちになる。