小松貴という昆虫学者がいる。
最初に知ったのは「裏山の奇人:野にたゆたう博物学」という新書である。
小松氏は他にも著作はあるが、私はこの本しか読んでいない。それでもこの本に書かれている著者のエピソードは強烈である。
昨今のアカデミックに言われているように著者も経済状況が非常に良くない。ただ、彼は昆虫への情熱のみで生きているので、へこたれずに頑張っている。
食事代を節約するために麦100%の麦飯を食したり、虫を呼ぶ餌がないので己の手垢を使ったりと色々と強烈である。
それだけでも十分印象深い話だが、東南アジアでアリの観察に没頭したために、蚊にくわれるままでいたら帰国後、デング熱を発症して死にかけたなどアレな話が満載である。
中でも一番強烈だったのが、著者が好きな種類の蠅(そもそもちょっとした虫好きの人間でも決して好きにならない種類の虫を好きになっているので、著者のコアなオタクぶりがよくわかる)を美少女イラスト化している事である。
軍艦や動物の美少女化は流行ったが、虫の美少女化のブームはまだ来ていないので、彼はまさに早すぎた天才と言っていいのではないだろうか。
そんな彼が今、NHKのラジオ第二の番組に出演している。
金曜日の20:30~21:00に放送されるカルチャーラジオという番組で「虫たちの不思議な世界」という題目で2020/3/27まで12回に分けて放送される。
第一回の放送が2020/1/10だったのでもう放送される事はないが、安心して欲しい。
2020/2/16現在カルチャーラジオのサイトにて3月上旬までストーリーミングで聞く事ができるのである。
だいたい、おっさんの声ばかり聴く事の多いカルチャーラジオで明らかにオタクくさい声が聴けるのは滅多にない事である。それも狂気すら感じるオタクの生の声である。
日本では確認されなくなったある虫がいるのだが、それを自分は絶対に見つけてやるんだと強く宣言していたのは若干ひく思いを自分はしてしまった。
余談だが、彼が海に住むウミアメンボという虫を採取するために台風一過の海岸に行こうとしたら(この虫を採取するのに一番良い状況が台風一過後の海岸である)、妻に危ないから止められたと言っているのを聞いて、あの彼が結婚していたのかと大変驚いてしまった。
繁殖できそうにない生物が奇跡的につがう事ができたのを確認した飼育員や学者のような気分になった。
まぁ何にせよ、2020/2/16現在は第一回目から聞く事が出来るので興味がある方は是非聞いて欲しい。虫好きは聞いて損はないと思う。