感想しか書いてない

本・映画・その他見たもの読んだもののアウトプット用のブログです。ほぼ感想だけを載せる予定

出生が悲惨すぎる主人公と聞いて読んでみた【木枯し紋次郎(一)赦免花は散った(感想)】

 いつものようにtwiiterを覗いていたら、誰かが木枯らし紋次郎の事を言っていて、この主人公の事を虚無的な人物と紹介していて、wikipediaなどで調べてみたら、「間引かれそうになったのを姉に助けられるも、その姉も病気で死んでそれから流浪の無宿人になった」とあった。昨今の創作でも中々ないくらいのハードな設定だと思い気になったので読んでみた。

 

 読んでみて思った事は、木枯らし紋次郎がハードで悲惨な生い立ちにも関わらず、自暴自棄にもならず修行僧のようにストイックであるという事だ。あそこまで酷い環境なら獣のような人間性になってしまっていてもおかしくないはずである。でも彼にはそもそも人間誰もが持ってるような煩悩というか欲望というものはなく、社会や世界への憎悪も一切持ち合わせていない。不思議といえば不思議な人物だ。

 10歳で無宿の道に進んだとあったが、普通なら少年ヤクザや半グレの受け子のように犯罪の片棒を担ぐ消耗品として扱われ鬼畜道を進むしかないようにも思うが、彼はそんな堕ちた人間にはなっていない。自分は紋次郎シリーズはこの一冊しか読んでないので想像で言うが、最初に無宿に入った時についた師匠的人物がよほど出来た人だったんじゃないかと思えてならない。そもそも我流であそこまで強くなれるのだろうか?

 もしくはベルセルクのガッツみたいにちょっと尊敬はできる師匠みたいな人についてたけど、裏切られたみたいな話があったりするかもしれない。

 しかし、「自分は生きるも死ぬも一緒。人並に生きる努力もしないから、人並に死ねるとも思ってない。」と考える割にきっちり生活してるので、矛盾しているといえば矛盾している。そもそも巻末の解説で「言行不一致」と言われているので、周知の事実なのだろう。紋次郎って本音ではどっかで「人を信じたい」と思っているし、「人から必要とされたい」と思ってるんじゃないだろうか。だけど、今まで何度も裏切られたし、排除されてきたから自己防衛としてああやってニヒルな態度をとっているのではないだろうか。

 それはそうと、紋次郎自身は自分はこの世には本来必要ないものと捉えてこの世をさすらっているのに何か妙なシンパシーを覚えてならない。私自身も色々あったので、この世にあまり必要がないというか本来なら居場所がないのではといつもどこかで感じているからだ。どこに行っても自分の居場所はここではないという感じがあるというか。まぁ私は紋次郎のように誰かに頼られるほど何かに強かったり秀でたりするような人物ですらないので、紋次郎より世間から見ればどうでもいい人間なのかもしれない。